[第五話] 野次に夢中で
これは7~8年前の話。
4家族で野球を観にいこうということになりズムズタへ。
子ども達7人を引き連れて西条から新幹線に乗ってのちょい遠征気分の観戦である。
球場に着いたらさっそく子どもたちにお母さん方から注意事項が告げられる。
「球場を見て回ってもええけど、5時には必ずカープうどんの店の前に集合するんよ。帰りみんなで揃うて帰るんじゃけ絶対に遅れちゃいけんよ!」
と何度も念を押して告げていた。
まだまだみんな小学生、野球に飽きたら球場探検もしたくなるだろうし、グッズ売場に行くのも楽しみにしているようだし「うんうん、そりゃ大事な注意だな」とそばで私も聞いていた。
そうして、試合開始したのだが相変わらずの負け試合。
試合終盤になってもひとっつも見所ないクソ試合。
子どもたちはとっくの昔に飽きてしまい、球場探検に出かけたきり。
わたしゃ相変わらずぶつくさ野次っていたが、いかんせんその日は内野自由席。
とてもじゃないが、グランドまで届くわけもない空しい野次になっていた。
で、いらいらが募った私はコンコースに降り立ち、1塁側内野指定の後からグランドに届けとばかりに野次を飛ばしていた。
すると、その内野指定からコンコースへと出てきたおじさんが私に「ほんまこんならつまらん試合するのぉ、わしゃもう帰るんでこの券あげるけぇ、わしの代わりに頼むわ。ベンチも近いとこじゃけよう聞こえる思うわ!」と言いながら券を私に差し出した。
こりゃ「渡りに船じゃ」とお礼を言ってその券を受け取ったのであるが、これが後で「穴があったら入りたい」状態の発端になる。
おじさんから券をもらった私は、意気込んでその席のあたりに向かう。
ベンチはすぐそこだ、これならヤジも届くだろう。
が、その席は列の中央あたりだったので、そこへ行くのも面倒なので通路に立ったまま野次の嵐を浴びせかけていた。
今の球場は野次などご法度のような雰囲気もあるが、わたしゃそんなのおかまいなし。
何か文句言う奴でもおりゃ返り討ちにしてやるぐらいの覚悟で野次っていた。
中には私の方を怪訝そうに振り向く人もいたが、「ほうじゃほうじゃ!」言うてくれる人もいてノリノリで野次っていた。
ノリノリ♪
つまり時を忘れて野次っていた。
で、「あれっ?そう言やいま何時じゃろ?」と時計を見たら5時を10分近くも過ぎとるではないか。
みんなとの集合は5時にカープうどんの前。
子どもたちが「絶対!絶対に遅れたらいけんよ!」とお母さん方に念押し注意されてた時間だ。
そりゃもう慌てたのなんの。
すぐさま踵を返し、全速力で階段を駆け上がり集合場所に走る走る走る。
目の前に一緒に来た仲間の一団が見えてくる。
私は彼らの背後から近づく格好になる。
すぐに謝らなきゃ、と思いながらさらにその背後に近づくと、ひとりの男の子がすでにお母さんに怒られている。
「あれだけ時間守れ言うたじゃろうが!」(この母親は島育ちで言葉が荒い)と言うと同時に頭をバシっと思い切りしばいている。
私はそれを見てその場にいたたまれなくなったのだが、誰も私のことなど気付くことなくその母子のほうを見ている。
怒られてた子どもが謝り、周りの大人たちも「まぁまぁ、そのくらいで」な雰囲気になりその場は納まり「さぁ、帰ろうか」ということに。
怒られてた子より遅刻したにもかかわらずその子のおかげで注目されてない私は、改めて「実はわしも遅れて今来ました…」と言うわけにもいかず、時間前からその場に居たような顔をしてみんなと一緒に帰路についたのである。
ちなみに、一緒に行ってた細君。
時間前から私にいくら携帯かけても出やしないし、周りに気遣いながらイライラしながら待ってたわけで。
家に帰ってぶち怒られたのは言うまでもない。

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4家族で野球を観にいこうということになりズムズタへ。
子ども達7人を引き連れて西条から新幹線に乗ってのちょい遠征気分の観戦である。
球場に着いたらさっそく子どもたちにお母さん方から注意事項が告げられる。
「球場を見て回ってもええけど、5時には必ずカープうどんの店の前に集合するんよ。帰りみんなで揃うて帰るんじゃけ絶対に遅れちゃいけんよ!」
と何度も念を押して告げていた。
まだまだみんな小学生、野球に飽きたら球場探検もしたくなるだろうし、グッズ売場に行くのも楽しみにしているようだし「うんうん、そりゃ大事な注意だな」とそばで私も聞いていた。
そうして、試合開始したのだが相変わらずの負け試合。
試合終盤になってもひとっつも見所ないクソ試合。
子どもたちはとっくの昔に飽きてしまい、球場探検に出かけたきり。
わたしゃ相変わらずぶつくさ野次っていたが、いかんせんその日は内野自由席。
とてもじゃないが、グランドまで届くわけもない空しい野次になっていた。
で、いらいらが募った私はコンコースに降り立ち、1塁側内野指定の後からグランドに届けとばかりに野次を飛ばしていた。
すると、その内野指定からコンコースへと出てきたおじさんが私に「ほんまこんならつまらん試合するのぉ、わしゃもう帰るんでこの券あげるけぇ、わしの代わりに頼むわ。ベンチも近いとこじゃけよう聞こえる思うわ!」と言いながら券を私に差し出した。
こりゃ「渡りに船じゃ」とお礼を言ってその券を受け取ったのであるが、これが後で「穴があったら入りたい」状態の発端になる。
おじさんから券をもらった私は、意気込んでその席のあたりに向かう。
ベンチはすぐそこだ、これならヤジも届くだろう。
が、その席は列の中央あたりだったので、そこへ行くのも面倒なので通路に立ったまま野次の嵐を浴びせかけていた。
今の球場は野次などご法度のような雰囲気もあるが、わたしゃそんなのおかまいなし。
何か文句言う奴でもおりゃ返り討ちにしてやるぐらいの覚悟で野次っていた。
中には私の方を怪訝そうに振り向く人もいたが、「ほうじゃほうじゃ!」言うてくれる人もいてノリノリで野次っていた。
ノリノリ♪
つまり時を忘れて野次っていた。
で、「あれっ?そう言やいま何時じゃろ?」と時計を見たら5時を10分近くも過ぎとるではないか。
みんなとの集合は5時にカープうどんの前。
子どもたちが「絶対!絶対に遅れたらいけんよ!」とお母さん方に念押し注意されてた時間だ。
そりゃもう慌てたのなんの。
すぐさま踵を返し、全速力で階段を駆け上がり集合場所に走る走る走る。
目の前に一緒に来た仲間の一団が見えてくる。
私は彼らの背後から近づく格好になる。
すぐに謝らなきゃ、と思いながらさらにその背後に近づくと、ひとりの男の子がすでにお母さんに怒られている。
「あれだけ時間守れ言うたじゃろうが!」(この母親は島育ちで言葉が荒い)と言うと同時に頭をバシっと思い切りしばいている。
私はそれを見てその場にいたたまれなくなったのだが、誰も私のことなど気付くことなくその母子のほうを見ている。
怒られてた子どもが謝り、周りの大人たちも「まぁまぁ、そのくらいで」な雰囲気になりその場は納まり「さぁ、帰ろうか」ということに。
怒られてた子より遅刻したにもかかわらずその子のおかげで注目されてない私は、改めて「実はわしも遅れて今来ました…」と言うわけにもいかず、時間前からその場に居たような顔をしてみんなと一緒に帰路についたのである。
ちなみに、一緒に行ってた細君。
時間前から私にいくら携帯かけても出やしないし、周りに気遣いながらイライラしながら待ってたわけで。
家に帰ってぶち怒られたのは言うまでもない。

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